新しい構造解析法を開発
2011年12月号 投稿者 NitechPress
セラミックス基盤工学研究センターの井田隆准教授(環境材料)と泉富士夫客員教授(物質・材料研究機構)が、物質の構造を解析するための新しい解析法を共同開発した。
新しい解析法は実測の回折強度と計算強度のずれの詳細な解析による誤差の推定と、この誤差を織り込んだ構造モデルの修正を繰り返すことで構造解析をするというものだ。最尤法(さいゆうほう)という推定法を用いて実験誤差を推定することで、構造モデルだけでなく誤差モデルも最適化することができる。
新しい解析法で求められた構造と、従来の解析法で推定された構造との間には有意な差が見られ、新しい解析法の方がより正確な構造モデルが導かれることが判明した。従来の解析法では実験誤差を正しく考慮することが困難であり、正確な解析結果を得るためには、かなり細かく粉砕した粉末試料を用いる必要があった。しかし、新しい解析法では試料を過度に粉砕しなくてもすむという実用性を兼ね備えている。
開発のきっかけとなったのは、来年愛知万博跡地にできる中部シンクロトロン光利用施設。シンクロトロン光は強力で高品質なX線であり、この施設には高感度なX線検出器も設備されるため、高速に高精度な粉末回折データを収集することが可能になる。しかし、従来の解析法では試料に要求される制約が強くなりすぎて施設の良さを生かせないことから、井田准教授は新しい構造解析法の開発の研究に取り組み始めた。
開発は粉末構造解析の第一人者でもある泉客員教授の協力もあり、着想から論文発表まで5カ月と早く進展した。
今回の開発について、井田准教授は「最尤法で実験誤差を推定するという考え方は新しく、方法論として改良する余地も残されている」と語った。新しい解析法は今後、物性科学や材料科学など広い分野にわたる多くの研究者によって有効性が確認され、幅広く利用されることが予想される。
