研究室の旅 第21回『安田・ニラウラ研究室(電気電子工学科)』
2011年12月号 投稿者 NitechPress
今回の研究室の旅では、放射線を用いた医療診断装置について研究している「安田・ニラウラ研究室」を紹介する。担当教員は安田和人教授(電気電子)とニラウラ・マダン准教授(電気電子)で、シリコン上にカドミウムテルルをのせた材料の開発を行う世界唯一の研究の場だ。
安田・ニラウラ研究室は「医療に役立つものを作ろう」という方針の下、放射線を用いた医療診断装置に注目し研究している。定期健康診断でお世話になる胸部X線検査がよい例だ。現在のX線検査では人体を通過したX線を一度蛍光板に通して可視光に置き換えることにより体内の様子を映し出すという間接法を用いているのだが、X線を読み取る感度と画像の高分解能がトレードオフの関係にあり、高性能の検出器の作成は困難であった。そこで、X線を直接電気信号に変換し検出する直接法を実現し、画像の鮮明化、高感度化を両立し、さらに物質の判別をも可能な検出器を実現することが当研究室の目標だ。この目的を実現できる結晶としてはカドミウムテルル単結晶がある。カドミウムテルル結晶はやわらかくてもろいという欠点のため、大規模な放射線画像検出器には利用されてこなかった結晶であるが、有機金属気相成長法(MOVPE法)を用いてシリコン上に形成させることで実用化につなげた。MOVPE法は発光ダイオードや超高速トランジスタなどに用いられる薄い膜の作成時に使われている方法であるが、その方法を用いて0.1㍉㍍、0.2㍉㍍もの厚さの結晶作りに応用するという独特な工夫をこらしている。カドミウムテルル単結晶を用いることで注目される一番のメリットは「物質が判別できる」ということである。この結晶を用いることで、人体を通過する放射線のフォトン(光子)エネルギーが検出可能になるため、影絵のような画像に加え、物質の判別も可能となるので医療での活躍の場が広がると期待される。現段階では、8×8に64個カドミウムテルル検出器を配列した画像検出器を実現しており、その特性も確認している。現段階でも64個以上に検出器を集積化した画像検出器の製作は可能であるが、現状では64以上の検出信号を同時に処理できる信号処理システムがないという状況だ。今はより大きいサイズで検出可能にするシステムの開発に向けても検討を開始している。
当研究室の特徴は、所属する学生がみんな同じテーマに沿って研究しているということである。そのテーマは代々引き継がれており、約10年にわたる。安田先生は「毎年毎年、同じテーマに取り組むから研究は確実に一歩ずつ進歩していきます。だからこそ、10年でこの段階まで来ました」と語る。この研究は、放射線のフォトンエネルギーが識別可能になるという点から、放射線発生源の種類が判別できる新しい放射線検出器開発の可能性も秘めている。今後の安田・ニラウラ研究室の活躍に期待したい。
