「あの電気自動車のモータはお父さんが考えたんだよ」と、子供に言いたい。
そう話してくれた小坂卓准教授(電気電子工学科)はとても温かな人で、研究している内容や研究室のことについて楽しそうに語る。今回の研究室の旅ではそんな小坂准教授の研究室を紹介する。
パワーエレクトロニクス
小坂准教授は,竹下隆晴教授と一緒に研究室を運営し,パワーエレクトロニクスについて研究している。パワーエレクトロニクスとは、交流として流れる電気を直流に変え、直流を交流に変える技術であり、コンバータとして広く知られている。例えば、多くの電化製品は直流で動くようにできているが、普段見かけるコンセントとかは交流で電力を供給している。そこで、コンバータを介して交流を直流に変え、電化製品が動くようにしているのである。主な課題は電力変換効率を上げることで、電気の種類を変える際にどうしても生じてしまう無駄を減らす研究をしている。また、必要量の電力を生みだすために電源だけに頼ってしまうと大きな装置が必要となってしまうが、直流を別の直流に変換するコンバータを用いて、より小さな機械で済ます研究もしている。
現在、小坂准教授はトヨタ自動車・電機駆動プロジェクトに関わっており、モータの開発に努めている。先ほどの技術はこの開発の基礎をなしているとともに、世界的にも必要とされるものだそうだ。小坂准教授は「日本の将来のために!」と、研究へのやる気を見せてくれた。
ちょっと変わったイベント
今年から始まったのだが、当研究室では特定の食べ物に絞ってパーティを開いている。4月はお好み焼き、5月はパスタ、7月は肉を持ち寄って焼く、という具合だ。余談だが、小坂准教授が7月に何の食べ物でやったか話すとき「焼肉」と言いかけて「肉を持ち寄って焼く」と言い直していた。このパーティがどれほど自由な感じでやっているのかが伝わってきたし、楽しそうに思える。ちなみに、次回の食べ物が何になりそうかは小坂准教授にも予想できないという。つい、このパーティがどうなっていくのか気になってしまった。
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研究室の旅 増田研究室(都市社会工学科)
連載:研究室の旅 へ投稿: 2009年6月号 | コメントは受け付けていません。
研究室の旅 増田研究室(都市社会工学科)
「面白いと思えることが大切」
そう豪快に言い放ったのは都市社会工学科の増田理子准教授。専門は保全生態学。7人の学生とともに、研究室内に収まらず山や湿地に経向いてフィールドワークも精力的に行う。今回の研究室の旅では、そんな増田研究室を紹介する。
■生態系研究
増田研究室は土木系で最も新しい分野である環境関係の研究室。主に、土木系の開発が様々な生物に及ぼす影響の調査といった生態系の研究を行っている。
工学部とはまったく関係ない研究内容に聞こえ、実際、「生きものが相手。思うとおりにいかないから、一般的な工業にはなじみがない」と、増田准教授は語る。しかし、ただ観察してまとめるだけでなく、研究を進める際には統計などの数学を多用するそうだ。ここに工学との共通点が見え隠れする。
研究は、各学生が自分の好きな事柄を選んで楽しくやるというモットーで行われており、例えば蝶に興味がある学生は、蝶の観察研究を行うといった形だ。
■研究室の雰囲気
増田研究室の雰囲気を学生に尋ねると、「ゆるい感じ」と同じ答えが返ってきた。先生の部屋と学生の部屋が隣り合わせで、両部屋をつなぐドアがあるという状況もあり、ふらっと先生が入ってきて話すことも多いという。
これからの研究方針を聞くと、「今まで通り。ぱっと見役に立たなさそうでも、おもしろいことを研究する」とのこと。これからどんな研究をしていくのか、注目していきたいところである。
研究室の旅 平井・岩崎研究室(電気電子工学科)
春が来て、今年もまた名工大に多くの学生が入学した。学生一人一人にそれぞれの大学生活の目標があると思うが、名工大に入学した目的は、将来社会で活躍するエンジニアとなることには変わりはない。今回は産業界と提携し、それを支える技術の研究・開発を行っている平井・岩崎研究室を紹介する。
コア技術の研究
平井・岩崎研究室では、製品を作る上で中心となるコア技術の制御を研究している。例えば、電子機器における基盤はミクロン単位の穴を開けることになる。基盤に穴を開けるレーザーの先にあるミラーを操作し、その反射角度からレーザーの進行方向にある部分に穴を開ける作業や、基盤に電子部品を取り付ける作業において、基盤やレーザーの位置を制御する技術が必要となる。同様に自動車の土台のバネの動きはセンチやミリ単位、ハードディスクのデータ書き込みについてはナノ単位での位置の制御が必要となる。いずれも規模が異なるが、いずれも運動方程式から数学的に求め出すという制御のアルゴリズムを組み立てる研究を行っている。
産学連携
研究室は、電気機器、工作機械、自動車などの産業界を担う様々な大手企業や、産学官から予算の支援を受けた企業が所有するプロジェクト研究所などと提携し、共同研究を行っている。企業が持つ高機能・高精度な製造機器や制御技術を前に、実際の製造技術過程についてを学び、これを基に研究室独自の制御方法の想定や検証を進めている。また、海外との技術競争を行っていく上で諸外国の大学とのつながりも深く、研究室の研究成果を伝えている。
研究室は、平井教授と岩崎、川福両准教授の他にプロジェクト研究所の助教授3名と多くのスタッフが所属する。取材に応じた岩崎誠准教授は「研究室では、どのような企業においても通用するような、ものづくりの技術に必要とされる実践的な制御技術を身に付け、未来の産業界の人材を育成していきます」と語る。
研究室のたび(12) 大岩・石野研
「スポーツを通して仲良くなったことで、研究についても学生と教員が気軽に話し合える研究室です」そう話すのは、機能工学専攻の大岩紀生教授である。今回は、大岩教授と石野洋二郎准教授の合同研究室を紹介する。
■燃焼を基とする研究
大岩・石野研究室では、燃焼についての基礎的な研究を行っている。燃焼にも拡散燃焼(ロウソクのように、外から空気を、中から可燃性ガス(ここではロウ)を用いた燃焼)、予混合燃焼(ガスバーナーのように、空気と可燃性ガスを予め混合した状態での燃焼)、副室式燃焼(主となるシリンダーとは別のシリンダー内に燃料を集めて、より熱効率を高める燃焼)というものがある。研究テーマに、「ガスタービンの燃焼の改善や燃焼圧を使ったエネルギー機器への応用」、「廃棄プラスチックのサーマルリサイクル」といったものがあり、燃焼の形態や効率に関する多くのデータを集め、環境に配慮した燃焼についての研究を進めている。
■つながりのある研究室
中間達彦さん(機能工学専攻M2)と伊藤正佳さん(同M1)は「研究室に配属されて、初めて話す人が多いけれど、毎年9月に行われる巴会(機械工のOB会)主催のソフトボール大会の練習などをきっかけに打ちとけられました(中間さん)」「学部生と院生が同じ部屋で過ごし、研究もほぼマンツーマン体制なので、研究室の仲は良いです(伊藤さん)」と研究室の雰囲気を話す。また、石川敦正さん(同M2)は「どんなことも全員で取り組んでいく研究室なので、研究熱心さだけでなく、スポーツなどみんなで楽しめることを持っている人を待っています」と話す。実際に、大岩・石野研は今年のソフトボール大会で準優勝に輝いている。大岩教授もファーストで出場し、4番を務めたこともあるようだ。
■ものづくりの精神
大岩教授は昭和51年に名工大に赴任し、翌年に研究室を設けた。実に30年もの歴史のある研究室も、設立当初は大変だった。「最初のうちは研究室に実験機器も無く、研究費も少なかったために大学に来ては、作業着に着替え、実験機器をただひたすら製作するという生活が続いた。この経験から、私の研究室は可能な限りの実験機器の自主製作を行うことで、将来にも関わるものづくり体験をするようにしている」と大岩教授は話す。その一例として、100万円の光学機器が必要であるところで、200円のレンズを使って自作するといったものがある。このように、燃焼の効率と同じように実験の効率も高めている。
大岩教授は再来年に定年退職するが、このものづくりの精神は石野准教授に、さらには将来の研究者に引き継がれることになるだろう。
研究室の旅(11)
岡本研究室(生命・物質工学科/物質工学専攻)
「仕事をしている気がしない。遊んでいる感じで研究を楽しんでいますね」
そう話すのは、物質工学専攻の岡本茂准教授。10人の学生とともに、宇宙を利用した新しい材料の開発を行っている。今回の研究室の旅では、そんな岡本研究室を紹介する。
■フォトニック結晶
岡本研究室では、全く異なる二つの高分子を結合させ(ブロックポリマー)、その単結晶を作ることにより、光学的に新しい性質の結晶である「フォトニック結晶」の生成を行っている。通常の高分子の約100倍の長さの高分子(超高分子とよばれる)の重合に成功したのは世界でも岡本研究室を含めて数例だけだという。フォトニック結晶は光に対して、電気でいう半導体の役割をすることがき、光コンピュータの可能性を現実のものとする。また、特定の波長の光を完全に反射するという性質を用いれば光ファイバーの効率化や、光コンピュータの配線基板に応用でき、また光を閉じ込めておくことができるため、光池(光の電池)や光コンピュータのメモリへの応用が期待される。フォトニック結晶は従来、微細な粒子を格子状に積み上げて作ったり、材料から細かく削って形作ったりしていたが、高分子の重合体を使うことで手を加えることなく自己組織的に結晶構造ができることが利点である。また高分子で作ったフォトニック結晶は、温度や圧力を変えることで取り扱う波長を自由にチューニングすることができる。
■宇宙での実験
大きな結晶をつくるためには、地球の重力が弊害になる。そこで岡本研究室はJAXAと協力し、2007年12月にカザフスタンにて打ち上げたロケットに実験道具を搭載、国際宇宙ステーションへ移し、無重力の宇宙での実験を行った。実験は成功し、2008年3月に宇宙飛行士の土井隆雄さんとともに地球に帰り、現在は宇宙実験でできた物質の解析をしているという。次の宇宙実験は数年後を目標にしている。
■充実の研究室生活
研究室ができて3年と、まだ新しい研究室だが、先生と学生が一緒にいる部屋では、先生と学生、または学生同士でよくディスカッションが行われる。10人という人数の割には学会発表が多く、最近は月に1回のペースで誰かが発表に行っているという。雰囲気も良く、研究室から笑いは絶えず、よくサッカーをしたり飲みに行ったりするとか。角幸治さん(物質工学専攻M1)は「やる気のある人にはどんどん協力してくれて、やりたいことは100%やらせてもらえる。気軽に見学に来てください」と話す。
■夢を持つこと
岡本准教授の宇宙へのこだわりの原点は、少年時代までさかのぼる。子供の頃、宇宙飛行士に憧れていたという岡本准教授は、98年のNASDAの宇宙飛行士募集に応募し、試験を受けた。しかし惜しくも不合格となった。ちなみにこのとき合格となったのが現在宇宙飛行士の星出彰彦氏ら。それでも宇宙への夢を捨てなかった岡本准教授は、宇宙を用いた材料開発の道へ進んだ。そんな岡本准教授は「それぞれ夢をもって楽しんでほしい。ゲーム機を使う時に読む取り扱い説明書と同様に 、自然と遊ぶ(=理解し利用する)にも、自然の取り扱い説明書が必要になります。それが教科書ですよ。何かやりたいという夢があれば、そのための教科書(取り扱い説明書)を読むのも楽しくなりますよ」と名工大生にメッセージを贈った。
研究室の旅(10)
中井研究室(都市社会工学科, 社会工学専攻)
16号館の2階に中井研究室がある。中井照夫教授(社会工学専攻)をはじめとする4人のスタッフに支えられるこの研究室は「みんなでいっしょにやりましょう」をモットーに主に地盤の研究を行っている。今回の研究室の旅では、そんな中井研究室を紹介する。
■土木のベースとなる「土」
中井研究室では地盤を地球の皮ととらえ、土木の基礎となる「土」を題材にトンネル、掘削、斜面の崩壊の解析など行っている。「土なくしては土木は成り立たない。いくらいい建物を建てたとしても地盤沈下したらしょうがない」と中井教授は話す。研究の流れとして、まず土の構成モデルを開発し、それを用いて計算機上で様々な条件での変化を予測する。合わせて模型による試験も行い、計算機実験での結果と比較しながら地盤の挙動を解析する。
■研究室の特色
研究室では数学や力学などの基礎を重視し、積み上げて実力をつける方式だ。毎年夏には大学院生が2週間ドイツで行われるサマースクールに参加し、研修やプレゼンを行ってくるのが恒例行事となっている。学生は活発で、先輩は後輩の面倒をよくみるなど楽しくやっている。中井教授はお酒が好きで、月に1回のペースでパーティーが行われ、親交を深めているとか。
■新たな2人の先生
今年4月から新たな2人の先生が研究室の仲間入りをした。中井研のポスドクから准教授となったホサイン・シャヒン准教授は「シミュレーションや有限要素解析が得意」と話す。学振研究員を経て助教となった菊本統助教は「シミュレーションに組み込むモデルを考えるのが好き。そのために実験もやります」と話す。中井教授は「私の研究は土の構成式からスタートしたが、今は学生を含む若い人たちをencourageすることが使命」と話した。新たなスタートを切った中井研究室の今後の動向に注目だ。
研究室の旅(9) 藤本研究室(情報工学専攻)
2月20日、3号館の11階などにおいて、藤本研究室オープンハウス2008と題して、藤本研究室の研究成果や技術シーズを公開するイベントが行われた。オープンハウスには研究成果を利用できないかと、企業の技術者約300名が来場した。今回の研究室の旅では、このように多くの人を集める魅力を持った、藤本研究室を紹介する。
■コア・テクノロジー~力触覚の技術~
力触覚技術は、人間が感じる力や触ったときの感触をセンサーによりセンシングすることと、センシングしたデータを人間にディスプレイすることの主に二つの分野で構成される。力触覚の技術を用いて開発された「触覚コンタクトレンズ」を使えば、例えば自動車にある熟練者にしかわからないようなわずかなへこみを、初めて触る人でも判別できるようになるという。力触覚の技術は藤本研究室のコア・テクノロジーで、この分野では世界一といえるそうだ。力触覚技術は計測機器やヒューマンインターフェースから、ロボットや医療の分野にまで応用範囲を広げ、それぞれの研究で有効活用されている。
■医療への応用
経済産業省のプロジェクトに採択され、昨年9月から活動を開始した「インテリジェント手術機器研究開発プロジェクト」では、力覚センサーを内視鏡に取り付け、それを執刀医がディスプレイ装置で感じることで、手術において熟練医のような繊細な作業が可能となる。また、最近では人工股関節の研究も始めている。現在の人工股関節はヨーロッパが主体で開発されており、アジア人の体型にあったものはないため、どこの人にでも合うものを製作するというもの。企業の参加も募り、実際にものをつくるところまで進めたいという。
■ネオロボット
ロボットといえば、モータなどの動力があり、エネルギーを使って動くものを想像するが、藤本研究室で開発している受動歩行ロボットはなんと動力なしで坂を歩いて下ることができる。見ているとおもしろいオモチャのようだが、受動歩行ロボットを研究することで従来の歩行ロボットが省エネルギーで歩くヒントになるという。このような受動歩行ロボットのほかに、水中ロボットのような、従来ロボットとされなかった「ネオロボット」の研究も行われている。
■おわりに
研究室のメンバーはスタッフも含めて100人を超え、研究テーマも医療からロボットまで幅広く、研究成果も多い藤本研究室の長である藤本英雄教授(情報工学専攻)は、まさに研究のプロデューサー。藤本教授は「人の能力を見つけて、その人の能力がもっとも発揮できるような仕事をさせるのがトップの役割。企業も発展するためにはトップの力が必要」と話した。