SACSIS2012にて、優秀若手研究賞受賞
2012年10月 投稿者: NitechPress
コンピュータが発達した現在、従来のシングルコアに代わり、1つのCPUに複数のコアが搭載されているマルチコアタイプが多くなった。ここで問題となるのは複数のコアによる競合である。この問題を解決するため今までは、ある1つのコアがメモリ内のある部分にアクセスしている間、他のコアがアクセスできないようにするロックと呼ばれる技術が使われてきた。しかしロックという技術には欠陥が多く存在する。デッドロックを引き起こす可能性があることや、ロックする範囲を適切に設定するのが難しいことなどだ。そのような問題に対抗するため新しく開発されたのがトランザクショナル・メモリである。しかし、このトランザクショナル・メモリは、starving writerと呼ばれる潜在的な問題を持っている。これは、読み取り作業をしたい複数のコアと書き込み作業をしたいコアがある場合はたいてい、長期にわたって読み取り作業の方が優先され続けてしまうため、書き込み作業に遅れが生じる現象のことである。江藤さんらはこのstarving writerの発生を抑制することで競合の繰り返しを抑制することに成功し、この論文が受賞することとなった。今回の研究では問題を見つけ出すのに1年、解決するのに半年の計1年半を費やしている。
論文の執筆者の一人である江藤さんは賞を受賞したことについて「研究室のお世話になった先生や先輩に恩返しができた」と述べた。津邑准教授は「レベルの高い会議なので呼ばれるだけでも嬉しかったが、表彰までされて驚いた」と語った。今後の目標について江藤さんは「この技術に関連したものを今度有名企業が出す。そういうものに自分の考えた技術が取り込まれればいい」と語った。研究室ではコンピュータの基礎を1から学ぶことができ、だからこそ今回の受賞という素晴らしい結果をだすことができた。今後のこの研究の発展にも期待したい。